March 18, 2008 12:21 AM
突然姿を消した婚約者を追って、わたしは新宿・歌舞伎町の、
彼が通っていたはずのバーを手当たり次第に探した。
煙草の煙が渦巻く中、
カウンターに群がる薄布を無造作に纏っただけの獣のような
決して若くもない女たちに彼の写真を見せる。
「あの・・・この人ここに来てませんでしたか?」
ひとりの女がぷはーっとわたしの顔に煙を吐き出したあと、
甲高い声で笑いながら答えた。
「なにこれぇー、いつの時代って感じぃー。」
「最近のものなんですけどね・・・」
カチンときたが、気を悪くさせないよう、軽くうなずく。
他の女たちも、取りあうように写真を手にしながら
口々に勝手なことを言った。
「うわっ、メット被ってンじゃネェの?」
「こんなの来たら、チガウ意味でアブないッつぅのぉー。」
確かめるようにそれぞれの女たちの顔を追っていく。
「あははぁ!なにこのポーズ!勘違いもいいトコじゃん!」
「売れないアイドルのレコジャケ?しかもソノシートじゃないのぉ〜?」
「ちょっとおネェちゃん、来る場所まちがってんじゃなぁい?」
本当にまちがえた、と思った。
女たちの輪からすこし外れて、
長い髪のカツラに時代遅れなワンピースを着た内股の彼が
おろおろしながら無言でこちらを見つめていたのだ。
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